ある処にひとりの女の子がいた。女の子は本が大好きで、本ばかり読んでいた。
女の子はいつからか、いつも一人でいた。誰かと親しく話すことはなかったけれど、それでも決して淋しくはなかった。
本の中に住み、様々な世界を魅せる登場人物達。それら全てが女の子の友達だったから。
けれど、女の子の家族はこう思った。
あの子はいつも独りぼっちでいる、本ばかり読んでいて、周りに関心がない。だから、友達もできないんだ。
家族として見過ごせない。何とかしなければ。
あの子は本が好きだから、人を拒絶し始めたのだろう。人と話しながらじゃ、集中して本を読めないから。
ある日家族は女の子の部屋に行き、うず高く積まれた本を運び出して全て燃やしてしまった。
女の子は淋しそうだったが、そんな女の子を見て、家族は満足していた。
これで女の子も、少しは周りと接触を図るようになるだろうと。
けれど、女の子の心は弱かったのだ。
それは元々、誰でも持っているような小さな穴だった。
けれど時を経て、家族の励ましや叱咤にもろくに応えられないほどに穴は広がってしまった。
日々呼吸のように強くあれと諭す家族に、女の子は耐えられなかったのである。
そうしてそれから間もなく、女の子は死んだ。
「やっと読む本がなくなった」
そんな書き置きだけを遺して、首を吊ったという。
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